ねこにつばさ。

(テレーズに耳としっぽが生えています)  やわらかな毛に覆われた耳がぴくりと反応する。 「キャロルぅ…」  ああごめんなさい、そんな眸で懇願されても逆効果なのよ。  まっすぐ伸ばした手におびえるように震えるテレーズを気にする余裕もなく触れる、耳に、そう、頭から天に向かってまっすぐ生えた耳に。たとえるならそう、猫。彼女の髪と同じ色の毛がふさふさと揺れている。親指の腹でやさしくこすってみれば、ぎゅ、と眸をかたく閉ざしてしまった。  視線を下げていけば、すっかり元気をなくしてしまった尻尾が視界に入る。尻尾。これもまた、猫みたいに。  異変が起きたのはつい先ほどのこと。悲鳴を上げるテレーズにつられて目覚めてみれば、やわらかな耳と、それからふりふりと揺れる尻尾が生えていたのだ。なぜ、なんて疑問の前に、かわいい、と。素直な感想そのままに触れていく。  特に尻尾の反応は鋭く、根元から先へと辿っていけばそれだけでなめらかな弧を描き気持ちよさそうに首を反らすのだ。感度まで猫になってしまったのだろうか、いいえそんなことより、もっと触れていたい。 「キャロル、わたしどうしたら…」 「このままでいいんじゃないかしら」 「人前に出られないです、こんな姿じゃ」 「出なくていいわ。こんなにかわいらしいあなたを誰かに見せるなんてもったいない」 「そういう話じゃなくて!」  口では怒っていたって尻尾がぴょいぴょいと左右に揺れているのだから、説得力もなにもあったものじゃない。かわいい、なんてかわいいの。飼ったことはないけれど、きっと彼女ほどにかわいい猫なんて存在しないのではないかと思えてしまうくらいに。  肩に両手を置いて、耳に口づける。にゃう、と洩らした声までも猫そのもので。 「一体どんな声でないてくれるのかしら、かわいい子猫ちゃん?」  尻尾がぴくり、期待に揺れた。 (つまりはどんなあなたでもいとおしいということ)
 一度はやってみたい獣パロ。  2016.3.6