あさきゆめみし、
01.いったいなにをしってるっていうの
いい加減愛想を尽かしてもいい頃合いじゃないかしら。
どうしてってあなた、よく考えてもみなさい。
いくら言い寄っても一向になびかない相手にこれ以上労力を割いたって時間の無駄よ。
だから私なんかやめて他の、
…ああはいはい嫌なのね、わかったからこんな夜中に出ていくのはやめなさい。
困った子ね。
02.ろうがとけるようにゆっくりしって
労を取っていると思われていること自体失礼な話ですわ。
わたくしは好んで足を運んでいるだけですのに、酔狂だとか変人だとか。
いいえ、あなたがなんと仰ろうと許せませんの。
あなたのことを知ろうともしないくせに上辺ばかりで判断する方々のこと。
だってあなたはこんなにも魅力的なひとなんですもの。
03.はじめからあなたというこは
はじめはなんて変わった子だろうと思った。
この業界に足を踏み入れたばかりの新人とはいえ、変物で通っている私の噂も少しは耳にしているでしょうに、わざわざ縁を繋ごうとしてくるとは。
「あら、それなら似た者同士というものですわ」
怯みもせず笑ってみせたその子の意思はなんて強いのだろうと思った。
04.においまですき
二週間。返事としては遅すぎるけれど許して差し上げますわ。
だって返信を待ち望んでいた時間さえいとおしかったんですもの。
これも恋の醍醐味ですわね。
封を切った途端ふわりと香る差出人のにおい。
皺にならないようそっと顔を近付け、息をひとつ、いつかあのひと自身をこうして嗅げたらなんて。
05.ほんとうに
本気なのだろうかと勘繰りたくなる。
他人の好意を疑うのは失礼だとわかっていながら、勿体ないほどの心を向ける先が果たして私なんかでいいのだろうかと思わずにはいられない。
本人にはもう何度も問うてきた。
けれどそのたびに、あなたでなければならないのだと笑うのだから本当、よくわからない子ね。
06.へんだなんてしつれいですこと
偏屈相手に懸想するだなんてどうかしている。
耳にたこができるほど浴びせられた他人の言い分にはもううんざり。
あのひとは偏屈でも変人でも唐変木でもありませんの。
ただ少し、ひとからの好意に懐疑的なだけ。信じられないだけ。
だからわたくしは愛を注ぎますの、あのひとが信じてくださるだけの愛を。
07.とうのむかしにねむりはあけて
閉ざしたまぶたに影が差す。
それだけで覗きこんできた者の正体に行き当たった。
「起きてるわよ」
「あら残念。眠り姫でしたらくちづけで起こして差し上げましたのに」
楽しそうに落ちる笑い声。
眸は開けない。
だっていまあの子を見てしまったら、起こしてくれてもよかったのにだなんて口走りそうだから。
08.ちがうといってちょうだい
「ちっともよくないですわ!」
目の前の眸が驚きに見開くのも構わず怒りをぶつける。
すきになったのが私じゃなければよかったのにね、だなんてあんまりですわ。
視界がにじんでいく、このひとが自分自身を認めていないことが悔しくて。
わたくしのすきなひとをこれ以上、わたくしの想いごと否定しないで。
09.りかいできないわ
「理由が必要なら差し上げますけれど、」
追い出さないところ。拒絶しないところ。臆病なところ。そのくせ寂しがりやなところ。
すきな理由を挙げ連なっているつもりらしいけれど、どうしてそんな部分に惹かれているのか私にはまったく理解できない。
「そうやってすぐ感情が顔に出るところもすきですわ」
10.ぬきあしさしあし、あなたのけはい
ぬくもりに引き上げられた気がした。
「寝不足は美容の大敵だって自分で言ってるくせに」
少し離れたカウチで本をめくっているそのひとはけれど帰れとわたくしを追い返したことは一度もない。
ぼふりと枕に顔をうずめる。
きっと読書中のそのひとがふれたであろう髪から枕と同じ香りがしてひとり笑みを深めた。
11.ルールもなにもあったもんじゃないわね
留守だと伝えていたのにあの子ときたら、お構いなしに扉を叩き呼び鈴を鳴らし、ようやく静かになったかと思えば庭からひょっこり顔を覗かせて、ああやっぱりいらしたわだなんて。
おおよそお嬢様とは思えない行動力に呆れてため息も出ない。
どうせ明日まで居座るんでしょ、もう諦めてるわよ。
12.おくびにもださない
お待たせしてごめんあそばせ、少し手間取ってしまいましたの。
待ってないだなんて、そんなこと仰らないで。
ここに来るときはうんと気合を入れておりますの。
かわいいだなんてそんな、知っていますわ。
「口にしてないことまで汲み取らないでもらえるかしら」
ということは思ってはいるんですのね、正直ですこと。
13.わかったようなこといわないで
私としたことがつい声を荒げてしまった。
なにも知らないくせに、と。
私のすべてを知ったような口振りで語るこの子がどうにも許せなくて。
「…わかりませんわよ、」
噛んだくちびるが痛々しい。
「だってあなた、なんにも話してくださらないんですもの」
いつか離れていくあなたに話すことなんて、なにも。
14.かえしてくださいおとめのじゅんじょう
かすかな期待に胸を震わせる。ああついにと鼓動が急く。
焦がれた顔が距離を詰めてきて、まぶたを閉ざす、そのやわらかさを想像して体温が上がる。
呼吸がふれて、においが掠めて、
「ほら、まつげ取れたわよ」
思わず視界を開けば、どこか得意気に微笑むあなたの姿。
そんなベタなことやめてくださるかしら。
15.よたばなしはそこまで
よほど水を浴びせようかと思った。グラスを手放さなかった自分を褒めてあげたい。
目の前の無礼な男は、私を話の種にするだけでは飽き足らず、ついには私と交友を続けるあの子にまで話題を伸ばしたのだ。
あの子が同席していなくてよかった。
話を遮り睨めつける。
「あの子を馬鹿にするのは私が許さないわ」
16.だれでもない、あなただけが
第一印象は、さみしいひと。
だれとも関わりを持とうとせず、自分ひとりきりの世界で完結してしまうひと。
そんな彼女が生み出すアートは孤高で美しく、だけどどこか悲しく映って。
「わたくしとても興味ありますの、あなたに」
はじめましての挨拶に、不思議そうに眉をひそめたあなたの表情が忘れられない。
17.れんあいかんじょうなんてないとおもっていたのに
レースに彩られた胸元が目に毒だった。
「いかがかしら。次のコレクションで出すつもりなんですけれど」
自身が手がけた下着姿の彼女を前に言い聞かせる。
これはファッション。邪な気持ちで見るのは失礼よ。
「華やかで繊細なデザインね、あなたらしくて素敵よ」
ああどうして目を逸らしてしまったのかしら。
18.そいねしたいところですけれど
ソファで眠るくらいなら一緒にベッドに入ればいいのにこのひとは、いつもわたくしに譲ってしまうのだ。
どうやら同衾という選択肢がないこのひとのぬくもりを求めてわたくしも負けじと、寝静まった後ひっそり寝顔を拝みに行く。
指を絡め、額にくちづけをひとつ。
いまはこれだけで許して差し上げますわ。
19.つぶやきにこたえはあたえられず
ついに現れなかった。
こぼれたため息に落胆が混ざっていることに自分でも驚く。
あの子だっていまをときめくアーティスト、多忙を極めているのはわかりきっているのに。
「…どうして期待なんてしたのかしら」
だれかを待つだなんてこと、いままで避けていたのに。
ひとりきりのソファがいまは広すぎた。
20.ねこばばされないように
ねこみたいだとあなたはよく称する。
失礼ですこと。わたくしはあんなに気まぐれでもわがままでもありませんのに。
ただ少し強引だったり、あなたに対する占有意識が強いだけですのよ。
「自覚あるんじゃないの」
反論してもあなたは苦笑するばかり。
いっそねこみたいにマーキングして差し上げますわ。
21.なんであなたがなくの
泣いた姿を見たことがなかった。
どれだけあしらってもどこ吹く風で、まるで犬みたいにまとわりついて、猫のように愛嬌を振りまいて。
だから泣くだなんて予想外だったの。
「わたくしのすきなかたを、そんな風に言わないでくださいませ…っ」
私は誰からも好かれないのだと、そう、自嘲しただけなのに。
22.らいしゅうだけといわずいつだって
来週の予定にわたくしも組み込まれていることが意外だった。
「だってあなたも興味あるって言ってたじゃない、あの美術展」
ええ、たしかにそうですけれど。
いつもならお誘いのひとつもなくふらりと行ってしまわれるのに。
「感想を共有するのもたまにはいいかと思ったのよ」
デートだと仰ってくださればいいのに。
23.むじかくなのかけいかくてきなのか
無理やり上がりこんでくるこの子を今日こそ追い返そうと思っていたのに、当然のようにソファを陣取り笑み崩れる姿を前に、文句がすべてため息に変わっていってしまった。
まあ、もう夜も遅いことだし。
言い聞かせたところではたと気付く。
そういえばいつも最終の便でやって来てはいないだろうかと。
24.うぬぼれてもいいでしょう
腕を引かれて思わず見上げれば、なんてことない表情のそのひとがわたくしを伴いさっさと歩みを進める。
「はぐれないでちょうだい」
いつも通りのぶっきらぼうな口調に広がる笑み。
ぎゅうと腕に縋り、頬まで寄せて。
「はぐれるわけがありませんわ」
だって気遣いの仕方がまるで恋人のそれなんですもの。
25.いばしょとばかりに
憩う場所がどうして私の膝なのか。
再三尋ねてみても、ここが一番落ち着くんですの、とそればかり。
腰に両腕を回しおなかにぐりぐり頭を押し付ける様子はねこのよう。
思わずあごを撫でれば、驚いたように見上げてくる水槽色の眸。
「わたくしはねこじゃありませんのよ」
口調とは裏腹に嬉しそうよ、あなた。
26.のこりはんぶん
伸ばした手は難なくかわされた。
「作業が終わるまでおあずけなんでしょ」
自ら約束したこととはいえあんまりですわ。
目の前にすきなかたがいるのにふれてはいけないだなんて。
向かいで見守る表情の楽しそうなこと。
「ほら、あとでご褒美あげるから頑張りなさいな」
その言葉、違えたら許しませんわよ。
27.おかしなはなしね
起き上がれない原因が胸にのしかかっているその子だということに気付くまでそれほど時間を要さなかった。
髪に隠れて見えないけれどこの寝息から察するにそれはそれはしあわせそうに熟睡していることだろう。
息をひとつ。
私の呼吸に合わせて上下する身体に、なんだか共同体みたいと、ひとり笑みがこぼれた。
28.くだらないいいわけはいりませんの
くちびるを預けたのはこのひとが初めて。
「…っ、ごめんなさ、」
我に返って離れようとする顔を両手で挟んで、その感触をもう一度。
なお逃れようとする身体に縋りつく。
胸が痛い。うれしさと、さみしさと。
いらない言葉は全部とかした。
わたくしだって初めてですのに、こんな真似させないでくださいませ。
29.やめなさいともいえなくて
やわらかさにぐらりと、これはたぶん、理性が揺らぐ音。
人肌を実感したのはいつ以来だろう。生々しさに眩暈さえ覚える。
「どうしましたの」
こんなときばかり無自覚なお嬢様が無邪気に見つめてくる。
だから胸が当たってるのよ。
襟元から覗く肌から必死に視線を逸らす。
お願いだから外で着ないで、その服。
30.まだこころのじゅんびができてませんの!
待ってくださいまし、これは想定外。
「いやよ」
そんな子供みたいに。
「うちに泊まるって、つまりそういうことなんでしょ」
そうですけれど、そうなんですけれど!
もっと甘い雰囲気が欲しいんですの。こういうことは素面のときにしてほしいんですの。
なのにあなたったら、
「あら、酔ってないわよ、私」
31.けいさんだかすぎでしょ
今朝からずっと気になっていたそれをとうとう指摘してしまった。
よくぞ気付いてくれましたとばかり振り返った彼女が嬉しそうに顔を寄せる。
「この間あなたがすきだと仰っていた口紅ですわ」
芽吹いたばかりの花を思わせるそれは悔しいほど似合っている。
「いかがかしら」
わかってるくせに聞かないで。
32.ふたりでずっと
ふれた手に鼓動が高鳴る。
いつもは一定の距離を置いてしまう宵色の眸がいまはわたくしだけをとかしこんで、けれど奥底に沈む不安の色はそのまま。
怯えたように重なっただけの手を握り返す。
「怖がらなくても大丈夫ですわ」
額を突き合わせる。息がふれる。
「なにがあってもわたくしは離れませんもの」
33.このままずっと
声がとけていく、おまじないみたいに。
「なにがあってもわたくしは離れませんもの」
永遠なんて嘘だと思っていた。
誰も彼もいつかはいなくなってしまうものだと諦めていた。
けれどいまは。混じりのない水槽色の底を覗いた、いまは。
「─…前言撤回は認めないわよ」
彼女の心を、信じていたかった。
34.えてしてそういうものですわ
映画みたいにうまくいかないものですわね。
昨日観た恋愛映画の主人公のようにさらっとくちづけたかったんですけれど、端正な寝顔を前にするとそのすべてを忘れて見入ってしまいましたの。
ソファに肘を突き、顔を覗きこむ。
ふにゃりと頬がゆるんだところでふれるぬくもり。
「隙が多すぎよ、あなた」
35.てをかして
手伝ってって言ったのにこの子ときたら、私の手のひらに自身のそれを重ねて不機嫌にふくれるばかり。
「そうじゃなくて。裁断を手伝ってほしいの」
「だからですわ。わたくしがいるのに仕事だなんて」
布から強制的に引き剥がされてため息をひとつ。
猫の手でも借りたほうがまだマシだったみたい。
36.あなたがいるあさ
朝は弱いんですの、もっと寝ていたいんですの。
毛布を取らないでくださいまし。寒いですわ。わたくしを凍えさせる気ですわね。
どうせ歳を重ねれば早起きになってしまうんですもの、惰眠は貪れるうちに貪るのが吉ですわ。
「だれが年増よ」
あら、一緒に夢に沈みましょうっていうお誘いでしたのに。
37.さっきまであれほどつよきだったくせに
先に仕掛けたのはそっちだっていうのにそんな表情を向けられてしまうと、なんだかいたいけな少女を組み敷く悪い大人みたいな気分になるじゃないの。
珍しく頬を染めて見上げてきていたその子がやがて両手で顔を覆う。
「こ、こんなはしたない姿、見ないでくださいませ…」
ああもう勘弁してちょうだい。
38.きがるにおいでませ
急になんですの、訪ねていらっしゃるだなんて。
事前に教えてくださればおもてなしいたしましたのに。
わたくしの真似、だなんて。
わたくしはちゃあんと、あなたのサロンの方々にお伝えしていますもの。
内密にはしていただいてますけれど。
迷惑なわけありませんわ、だってようやく来てくださったんですから。
39.ゆめにまででてこないで
ゆるりと目を閉じたその子のくちびるを塞ぐ。
若々しい弾力を味わって、舌を忍ばせて、並びのよい歯列をなぞって、期待に震える背を撫でて──、
「もう! わたくしの隣で居眠りだなんて!」
視界を開いてすぐ、間近に迫った紅に心臓が跳ねる。
目くじらを立てるこの子がどうか夢の中身に気付きませんように。
40.めんどうなひとですこと
目が訴えてますの、ここにいて、って。
だからわたくし、こんなに粘っていますのに、あなたったら保護者みたいに早く家に帰りなさいだなんて。
ひとりになりたくないくせに、だれかにいてほしいくせに、本心を晒せないあなたが面倒で、いとおしくて。
「本当、仕方のない子」
それはわたくしのセリフですわ。
41.みっともないおとなだこと
見る間に色を深める頬。
普段はませた口をきくくせにこういうところはやっぱり年相応なのね。
無垢な少女を暴くことに罪悪感を覚えつつもボタンを外す指は止められない。
「逃げるならいまのうちよ」
すかさず横に振られる首。
怯える手の甲に重ねたくちびるが震えていることにどうか気付かないでいて。
42.しかたないといいつつくださること、しってますのよ
仕事はすきですわ、もちろん。だからこそこの世界に入ったんですもの。
けれどあなたとの逢瀬が減るとなると話は別ですの。
「あれもこれもって欲張りな子ね」
なにを今更。いまに始まったことではありませんわ。
わたくしは仕事もあなたも、両方たくさん欲しいんですの。
ですからほら、ご褒美、くださいな。
43.ええ、ええ、すえぜんにはなれてますとも
「え、」
そう洩らすしかなかった。
彼女が持参してきた年代物のワインをふたりで空けたばかりだった。
とろんと表情をゆるめた彼女がしなだれかかってきて。いつにない夜の雰囲気に絆されあごを持ち上げて。
くちびるが重なる直前、聞こえ始めた寝息に呆気にとられる。
ああそうだ、この子はお酒に弱かった。
44.ひだまりみたいなぬくもりが
ひとつひとつ丁寧に編まれた作品に知らず感嘆の息が洩れる。
あのひとの作風が変わったように感じるのは気のせいだろうか。
何者をも拒絶する孤高のデザインだったのに、どこかあたたかみが加わったような、そんな印象。
「やっぱりすきですわ、あなたのすべてが」
「変わった子だこと」
「存じてますわ」
45.もとめられるのもわるくないわね
もっととねだるくちびるに自身のそれを重ねる。
どこまでも欲張りなこの子が一度で満足するはずもなく、二度、三度、角度を変えて今度は深く。
か細い指が背中に縋りつく。
息継ぎが下手なくせに離れようとしないその子の求めるまま舌をさらって、目尻に浮かんだ雫を拭って。
お望みとあらば吐息まであげる。
46.せめてすこしでもながくあなたのなかにのこっていたいんですの
背中に咲いた夜の名残にくちづける。
赤々と映るそれに、よほど強く爪を立ててしまったのだろうと申し訳なさを感じつつ、それでもやめなかった彼女へのいとおしさがこみ上げてやまない。
起き出す気配がないのをいいことにひとつ、もうひとつ。
どうか少しでも長く刻まれていますようにと願いをこめた。
47.すきとつげるまであとどれほど
「すきですわよ、あなたのこと」
彼女の好意を自然と受け止めるようになったのはいつからだろう。
邪気のない笑みに混ざったたしかな親愛に疑いを持たなくなったのはなぜだろう。
彼女の好みに合わせて淹れたコーヒーをひと口。
「知ってるわよ」
頬にのぼった笑みに気付いた彼女が嬉しそうに相好を崩した。
48.ん、からはじまる
ん、と上がった声にまぶたを開く。
差しこむ朝日に照らされた寝顔がまぶしくて思わず目をすがめた。
ああまだ夢のなかにいるようですわ、ずっと焦がれていたひとがわたくしの隣で眠っているだなんて。
起こしてしまわないようそっと額を合わせる。
どうかこの夢が終わりませんように。
ひそやかな願いを陽光にとかした。
(臆病なあなたの心にどうかいつまでも居座れますようにと)
臆病な彼女と強引な彼女の48のしあわせたち。
2020.10.12