あまくておいしい、
一個ちょうだい、って。私はそう言っただけなのに。
「んー、もう一個入れようか」
「も、…やぁ…っ」
伸ばした手をぱしりと掴まれ、代わりに襲ってきたのは息がつまるような圧迫感。ふ、と。止まりそうになる呼吸を必死でかき集める。
アナの細い指によって一つ目が奥に追いやられ、今まさに二つ目のやわらかいそれが侵入してこようとしている、そんな様子が手に取るようにわかってしまって、遅れて羞恥がやって来た。
どうか色を見咎められませんように、そんな願いはもちろん届くはずもなくて。
「なにいまさら恥ずかしがってるの」
言葉尻と、それから口角も意地悪く上げて。顔を覗き込んできた妹は入り口に添えた指をわずかに沈みこませた。ただそれだけのことなのに、指とは違うかたい感触に背筋が震える。
「ララクラッシュだからね」
やっぱり反応を感じ取ったらしいアナは、よくわからない理由を与えて指を二本に増やした。
「ふ、…は、ぁ…」
音が立つほどにかき混ぜられたら、言葉も思考もぜんぶぜんぶぐちゃぐちゃにとかされていって、なにも考えられなくなる。ううん、アナの指先の行方ばかりが気になってしまうの。
固形物を指にはさんで押し当ててくるくせに、決定的なものは与えてくれなくて。息が止まったかと思えばすぐにまたもどかしいしびれが戻ってきて。
「や…、いやっ…」
「嫌だった? ごめんね」
ぴたり、動きが止まる。
そうすると異物感ばかりが残ってしまって、せっかくたぐり寄せていた快楽さえどこかに行ってしまいそうになった。我知らず視界がぼやけて、頬を熱が伝っていく。
ねえ、あなたはいじわるよ、アナ。
「いやじゃない、から…おねがい…っ、」
先なんてとっくの昔に読んでいるはずなのに、わざと続きを促させて。
わかった、と。口はそう形作っていたはずなのに、音は届いてこなかった。急に増した質量に頭がぬり変えられて、背中が痛いくらいに反る。ぱちぱちとはじけるような衝撃に耐えられなくてシーツをきつく握りしめれば、手の甲を覚えのある指先が辿っていった。
「ええ、と…落ち着いた…?」
ようやく酸素が戻ってきたころに、原因であるはずのアナがそっと尋ねてきた。いまさら罪悪感でも感じているのか、おそるおそる、窺うように。犬だったらきっと、しゅんと耳を垂らしているだろうそんな妹の様子がかわいらしくて、指を組み合わせた。
どんなことをされようと、こんな表情を見てしまえばたちまち許してしまうのだから、私は大概妹に甘いのかもしれない。
ぎこちなく作った笑顔に、アナの顔がぱあと、いつもの輝きを取り戻す。握った指に力をこめて、
「じゃあ、もう一個いってみようか!」
ねえアナ、限度というものを覚えましょうか。
(もうおなかいっぱいよ)
某ららくらっしゅの話が出たので。
2014.7.3