それは私たちだけの秘密。
「ね、これはあたしたちふたりだけの秘密よ」
膝でにじり寄ってきた妹がささやく、誰にも聴こえないように――この部屋には私とアナ、ふたりしかいないけれど。それでも小さく、静寂を破ってしまわないように、かわいらしいくちびるは紡ぐ、絶対ね、と。
かけられた言葉はまじないとなって私たちを縛る。そうして誓う、偽りの関係を崩してしまわないことを、想いを私たちふたりだけで共有し合うことを。
僅かに距離を詰めただけで、むき出しの膝が触れる。小さなぬくもりだけが、妹がたしかにそこにいることを証明する唯一のものであるように思えて。
「この想いは誰にも知られてはいけない」
「抱いてはいけない想いだから」
「超えてはいけない想いだから」
「だから、」
自然、突いたままだった腕を持ち上げる。一番か細い指をふたりして差し出して、絡めて、口にしたフレーズは子供のころに教えてもらったおまじない。私をふたりだけの檻に閉じ込めるのろい。
ゆーびきーりげーんまん
昔となんら変わらない無邪気な調子で声を合わせる、昔と変わってしまった重みを小さな指に託して。
「うそついたら、」
歌をさえずったくちびるが妖しく微笑みを浮かべる、とうの昔にその先を理解して同じ表情をこぼす私をその薄氷色の眸に映して。
距離をゼロにして、息を洩らして、それさえも呑み込まれようとする寸前、
「──はりせんぼん、のませちゃうんだから」
(きっとその時は永遠にこないだろうけれど)
ゆびきりしましょ、うそついたら、
2015.4.13